序章

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『あなた』は刑事さんです。 いつも一緒の部下君と、これまたいつもどおり、殺人現場へ向かっています。 『あなた』は、毎度おなじみ部下君の運転する車の助手席にいます。そこで今回の事件の概要をいつもどおり、部下君にテストしています。 「遺体で発見されたのは、宇津井義彦(ウツイ ヨシヒコ)さん、72歳です。義彦さんは宇津井建設会社の会長職についています。宇津井建設の創始者で、戦後の高度経済成長期に小さな建設会社を立てたのをきっかけに、以後、業績を伸ばしつづけ、建設業界では……立志伝中の人物ですね。以前は子会社をばんばん抱えた大企業でした。子会社全てに親族を送り混んで、宇津井一族による経営支配です。ですがバブル後は……」 最近はすらすら答えるようになってきました。……ちょっと面白くありません。 ――会長……と言う事は、社長さんは他にいるんですね? 「はい、現在の宇津井建設の代表取締役は、登記の上では息子で長男の宇津井二郎(ウツイ ジロウ)氏となっています。42歳です。しかし……」 ――はい? 「実質的には、会社を切り盛りしていたのは会長職の義彦氏のようですね。未だに、重要な会社財産や方針に関する事項の決定権は最終的には義彦氏にあったと聞いています」
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