序章

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――ああ、じゃあ、息子さんはお飾りの社長さんなんですね。それで、死因は? 「頚動脈刺傷による、出血死との報告がきています。首を何か鋭いエモノで真一文字に右から左へ、切られています。凶器はまだ見付かっていません。現在の鑑識の調査は死体発見現場である最上階の10階が終わって……いま、9階をやっているところです」 ――頚動脈ですね……。そりゃ……さぞかし血が飛び散ったでしょうね。 「事件があったのは、宇津井建設ビル内……ああ、自社ビルですね。その最上階10階にある会議室内です」 ――はいはい。 「事件があった日は、その会議室で、今後の宇津井建設の経営方針について取締役会が開かれる予定だったようです。取締役会は14時からの予定でした。第一発見者は義彦氏の秘書で井上敏子(イノウエ トシコ)さん、25歳。資料の配布やお茶の準備のために、彼女が13時45分に会議室に上がっていったところ……義彦氏がそこで血を流して倒れているのを発見しました。慌てて119番通報しています。通報があったのは……13時55分です。これは記録が残っています」 ――なるほどね……セオリーどおりで行けば……第一発見者が怪しいところですが。
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