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――そうですか、何か内緒話でもするつもりだったんですかね。
「さあ、それは二郎氏本人に聞いてみれば分かると思いますが。秘書の話では義彦氏と二郎氏は随分長いこと話し込んでおられたようですよ。社長室から二郎氏が出たのが1時30分頃です。……社長室から出てきた二郎氏は随分、顔色が悪かったと……」
――それも秘書……井上さんの証言ですか?
「はい。それからもう一人、義彦氏は従業員を社長室に呼んでいます。ええと、名前は、加納一郎(カノウ イチロウ)さん、45歳。彼とも、義彦氏は二人だけで話をしていますが、これは10分くらいだったと。ああ、着きましたよ。ここですね」
いつものように『あなた』は部下君の急ブレーキに備えて、シートに深く座りなおしました。
――やれやれ、頚動脈をばっさりなら……現場は血の海でしょうね……。
「……ですね。動脈を切ったときは、それこそ天井まで血が吹き上がるといいますから」
そう言って部下君はニヤリと『あなた』のほうを見て笑いました。また調子に乗っているようです。
シカトしておきます。
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