序章

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「……でも今回の事件はそう複雑でもないようですね。さっさと片付けて犯人逮捕して帰りましょう。それにしても……推理小説みたいですよね?」 部下君の顔にワクワクと書いてあります。 そう、いつもと違って今回の現場には重要な手がかりが残されていました。『あなた』ももちろんそれを知っています。 ――そうでしょうか……微妙だと思いますよ。 現場には……一枚の紙切れが残っていました。ああ、紙切れといえばかっこいいですが、単なるティッシュ一枚です。……そのティッシュに……。 部下君は急ハンドルを切って、宇津井建設の駐車場に車を乗り入れます。いつもどおり、うんざりですが……、最近の『あなた』はもはや動じません、怒りも覚えません。 人間とは成長する生き物ですから。
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