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その船に、彼はいた。
雨の中甲板に立って、陸地の方角をさがしているみたいだ。
濡れた金髪がキラキラして、遠目だけど顔も綺麗っぽい。
だから、僕は一層声を張り上げて歌った。
船を沈めればあの人を近くで見られるから。
大雨は嵐に変わって、波は津波のように高くなった。
船はあまりにも容易く転覆していた。
僕は彼を探して海面近くを泳ぎ回る。
歌うのを止めたせいで海はいつもの平静を取り戻し微かな光が海中に差した。
(…………いた)
金髪が光に透けて漂う美しい彼。
意識はないらしい。
抱きかかえて海上へ上がった。
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