776人が本棚に入れています
本棚に追加
何度思い返しても、鍵を閉めた記憶がない。
急いでいたので曖昧だが、鍵は職員室に預けずに帰った覚えはある。
ランドセルを調べられたら鍵が出て来るだろうから、犯人は野呂だと直ぐに判明してしまうだろう。
野呂はとてつもない恐怖にかられた。
クラスメートから浴びさせられる数々の非難や怒号、罵声。
教室内の空気を想像すると、居ても立ってもいられない。
だが、そんな彼の心配とは裏腹に、クラスメート達の視線は野呂ではなく、遅れて登場した立川へ向けられた。
「最っ低!」
「兎殺し!」
本来であれば、野呂に浴びせられる筈の言葉たち。
立川は状況が掴めず、ドアを開けたままの態勢で呆然と立ち尽くしているだけ。
当然だ。
何も知らないし、やってもいないのだから。
どうやら、野呂と立川が当番を交代したことは誰も知らなかったようだ。
立川の仕業だと信じて疑わないクラスメート達は、こぞって彼を容赦なく責め立てる。
極度の緊張の為に嘔吐しそうになるのを、歯を食いしばって堪える野呂。
青ざめた顔には、幾筋もの冷や汗が滴っていた。
最初のコメントを投稿しよう!