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「ああ……。
今日もいい天気ですよ」
細められた着物と同色の瞳が朝日を吸収し、妖しく煌めいた。
「こんな日は縁側で風月堂の
和菓子をいただきながら、
のんびりとお茶を啜るのが
一番ですよ」
男が甘い妄想に耽っていると、三毛猫がそれを窘める。
「ギニャー!」
「……はいはい、仕事ですね。
きちんとしますよ。
人使いが荒いんだから、うち
の看板猫様は」
重い溜め息をつきながら、戸に掛けられた『準備中』と書かれた札を、『営業中』という文字が見えるようにひっくり返す。
ついでに周囲の店の従業員達とにこやかに挨拶を交わすと、いつの間にやら怠け心は何処かに飛んでいったようだ。
「今日も一日、
頑張りましょうか」
「ニャン」
猫の返事に男は微かに笑みを浮かべ、店内へと静かに消えていった。
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