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「わ、分かったよ。
用意するよ、“信ちゃ”――」
最後まで言い切ることはなく野呂は殴られ、横に吹っ飛んだ。
バランスを失い、壁に叩きつけられる。
「馴れ馴れしく呼んでんじゃ
ねぇよ! 明日までに四万
持ってこい、いいな!?」
氷のような冷たい視線を向けると、立川は倒れたままの野呂を残し、その場を後にした。
「…………」
独り取り残された野呂は膝を抱え、無言のままうずくまった。
左頬は熱をもち、鼓動に合わせてじんじんと痛む。
何故こうなってしまったのか。
考えるまでもなく、答えは簡単で。
この状況を作り出したのは、紛れも無く彼自身だった。
――あれは、彼らが小学校四年生の頃。
同じクラスの立川と野呂が、まだ仲が良かった頃のことだった。
校庭の片隅には小屋があり、兎をニ匹飼っていた。
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