みかん

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退院して以来 父は全く外には出なくなってしまった… あんなに毎日のように行っていたパチンコさえも… 冬に入り寒くなったのもあるだろうが近所の食堂に食事にいく事も銀行にも行かずただこたつでTVばかりを見ていた… 心配で仕事合間に時々様子を見に来たりしていたが… 年末で私の仕事も忙しくなってきたのだがなるべく外に出したくて休日には買い物には必ず連れて行った…まだ車椅子は必要なかったがながくは立ってられなく休みながらの買い物なので時間はかかった。 でも父はスーパーの買い物は好きなので 「買い物行くかい?」 と聞くと必ず 「行く!」 とすぐに返事は返ってきた 「よし!行こう!」 父を暖かい服装に着替えさせよく出掛けた。 父の好きな物は大体決まっている。 茶碗蒸し、鮭の切り身、ちりめんじゃこ、赤飯などいっばいある。 この時期なら父にはみかんは必需品で四国出身ならではで昔は箱で買ってたぐらいだ。 少し異変に気付いた… 品物と値段を比較して選ばなくなっている… 以前は必ず比較して自分が納得した物をかごに入れていた。 その店が他の店より高かったら諦めもしていた… ところが何でもかんでもかごに入れるのである。 金銭的な感覚がおかしくなっている… そういえば…国民保険の支払いなんかもほったらかしたままになって督促状が来ていた… 慌て私が払い込んだが…今までにはない事だった。 なぜかお金には興味がなくなってしまっていた… でも自分の食べたい物はまだ選ぶ事はできてスーパーの弁当で天丼にするか牛丼にするかをかなり迷っていたりした。 父の朝昼食なども買い重労働の買い物を終え袋を車まで運ぶ… もちろん全て私が運ぶのだが父を支えながら運ぶ私を見て悪いと思ったのか 「一つ持とう!」 と一番小さくて軽い袋を選んだ… なぜか二人顔を見合わせて大笑いした事があったっけ…
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