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「あの、聞きたいことがあるんですけど…」
「ん~どうしたの?」
花畑に挟まれた道を進みながら、千恵さんに質問をする。
「いや、あの、いまさらなんだけど…常識的に考えて、女学園に男子が通うっていうのはまずいんじゃないかな…」
「ん~、大丈夫大丈夫」
「なんだか適当ですね…」
「…実はね、この学園の男女共学化をちょっとだけ考えてるのよ。だから今回の棗君の入学は、その共学へのいい傾向になるんじゃないかなと思ったの」
「そうなんですか…
でもやっぱまずいんじゃないですかね?
それに心配しないでもいいって言われたけど…少し心配になってきたっていうか…
友達ができるかどうかとか…」
「その点は心配ないと思うわよ」
「え、なんで?」
「だって棗君、かっこいいじゃない。こんな男っ気がないところに棗君みたいな男子が入ってきたら、きっと人気者になると思うわよ」
「そ、そうですかね…
でもこんな場所でいきなり俺を見た人はびっくりするんじゃないかと…」
「うん、それも大丈夫!
全学年に連絡網まわしといたから。『今年からカッコイイ男の子が一人、高等部に入学します』ってね」
「そう…なんですか…」
俺は曖昧に返事をした。
この人色々とぬかりないな…
そんなこんなで俺は寮の前にたどり着いた。
「それじゃ、私は仕事があるからここまで。そこで待ってたら美菜がもうじき来ることになってるから、部屋を案内してもらって」
「わかりました」
俺がそう言うと、千恵さんはニッコリ笑って、寮とは反対方向に歩いていった。
それから数分後…
「棗~」
懐かしい声が耳に届いた。
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