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数週間後。
弁護士と、貴之と、父親と、そして右京と彼の両親を交えて話し合った結果、貴之は右京の家でお世話になることが決まった。
本人の希望であり、そして後見人でもある貴之の弁護士が話し合って決めたことだ。
父親も頭に血がいってしまい、自分がどんな暴言を吐いたのかを、全く覚えていないと言い張り、親権を主張したが却下された。
法律の専門である弁護士がしっかりと耳にしたのだから、言い逃れは出来ない。
また、右京の両親は息子と貴之の二人から事情を聞いて驚いたが、すぐさま貴之に同居の話を持ちかけたのだ。
善意ではない。
右京の友達が困っているのなら、助けたいと思ったのだ。
弁護士も『高校卒業まではお世話になりなさい。』ということで貴之も承諾した。
だが、右京だけは複雑だった。
貴之と一緒に暮らすのは賛成だ。
ただ、自分が彼に対してどう思っているのかが判らない今、どう接すればいいのか理解に苦しむ。
役所で住民票を異動させ、そこからホームセンターへ向かって貴之用の家具を見物しては必要最低限のものを購入する。
右京の姉が残していった家具を活用するためだ。
部屋も空いているのも、貴之との同居決めた理由の一つだが、二人は短い間でも両親の暖かさを知ってもらいたいと思ったのだ。
血は繋がっていなくても、大人が子供を慈しむのは変わらない。
こうして、貴之を交えた四人の生活が始まった。
相変わらず貴之はバイトと学校生活の往復だが、バイトがない日は手伝いをしている。
右京も一緒に手伝いをしているが、貴之の笑顔を見る度に苦痛を感じる。
心の中に灯った火が徐々に大きくなっていく。
それを必死に抑えるので、精一杯だ。
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