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それからというもの、雄大は二日に一回のペースで、秀敏の工房を訪れては、右京に色々とアドバイスをしたり、ちょっかいを出しては面白がっていた。
最初から雄大のイメージが最悪だったのか、右京は毛嫌いをしながらも、アドバイスをしてくれる時は真剣に話を聞いていた。
ここにいる時は、貴之のことを忘れられるからだ。
土を練り、作品を作っていく。
加減が出来ず、すぐにつぶれてしまうが、諦めることはなかった。
『自分の作品を完成させたい!』
それが右京の強い思いだった。
季節は巡り、秋になった。
相変わらず、右京は部活と工房と自宅だけの生活を送り、貴之も家とアルバイトの生活を送っていた。
秀敏の都合で工房に行くことが取り止めになった右京はこの日、いつもより早く帰宅した。
そこへアルバイトを終えて帰ってきた貴之と遭遇した。
久々に見る貴之は疲れた表情をしていた。
母親から、バイトの数を増やしたらしいと聞いており、右京は心配した。
「貴之、お前・・・大丈夫か?」
「大丈夫だよ。お金を稼がないと、授業料・・・。」
そこで言葉が途切れた。
多分、久し振りに右京の顔を見て安心したのか、貴之の気が緩んでしまったらしい。
がくんと膝を折り、その場に倒れそうになった貴之を、右京は慌てて彼を抱きかかえた。
久々に近い距離で貴之の顔を見る。
右京はドキッとしながらも、必死で自分を抑えていた。
「貴之!」
「悪い。何か俺、右京の顔を見たら気が抜けたみたいだ。」
「えっ?」
「だって、ここ数ヶ月。右京とまともに会っていなかったから。俺、何かお前を怒らすようなことをしたのかな?って思ってさ。」
「貴之・・・。」
「俺、お前に嫌われたくない。大事な友達だから・・・。」
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