270人が本棚に入れています
本棚に追加
なんと、雄大の個展のお知らせのペーパーだったのだ。
(いつの間に!)
しかも右下にはしっかりと手書きで連絡先が書かれている。
多分、雄大個人の連絡先だろう。
知り合ってから度々『連絡先を教えてくれよ。』とは聞かれていたが、さすがに家の電話を教えるわけにはいかない。
だからずっと拒否をしていたのに、雄大は諦めていなかったらしい。
「何だかな・・・。」
呆気を通り越して、笑いが込み上げてくる。
右京は笑いながらペーパーを二つ折りにすると、机の引き出しに入れた。
引き出しを元に戻したのと同時に、下から母親の声が聞こえた。
どうやら夕飯の支度が出来たのだろう。
返事をして、右京は部屋へと出る。
そしてその日は、久々に四人が揃ったので、会話がいつも以上に盛り上がった。
右京は工房の話を。
貴之はバイト先での面白いスタッフの話を。
二人から話を聞いて、両親は笑い過ぎて、ご飯を食べる手を止めていた。
今日の夕飯は、貴之の大好きな厚焼き玉子と、右京が大好きな煮魚だ。
本当は唐揚げだけにしようと思っていたが、二人が一緒にご飯を食べるということで、急遽変更をしたのだ。
大満足で夕飯が終わり、貴之と右京はそれぞれの部屋に戻った。
明日の準備をして、交代でお風呂に入る。
先にお風呂を入った右京は、ベッドの上で雑誌を読んでいると、トントンとノックの音が聞こえた。
「はい?」
雑誌を読みながら、右京が返事をする。
「右京?今、いいか?」
声の主は貴之だった。
右京は驚きながらも雑誌を閉じて、ベッドから降りるとドアを開けた。
開けると、そこにはお風呂上りの貴之が立っている。
「どうした?」
「いや・・・。お前の顔が見たかっただけ。お休み。」
「ああ。お休み・・・。」
ニコッと笑い、貴之は部屋へと戻っていく。
彼のおかしな様子に、右京は首を傾げながら、ドアを閉めたのである。
最初のコメントを投稿しよう!