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事件は翌日に起きた。
その日の昼休み、久し振りに貴之が右京のクラスを訪ねたのだ。
「右京!一緒に昼飯でも食べないか?」
「ああ。」
何気なく返事をして、お弁当を持って右京が立ち上がると、背後から数名のクラスメイトの奇声が聞こえたのである。
(何だ?)
右京は不思議に思い、後ろを振り返る。
貴之も、入口で奇声を聞いたのが気になったのか、教室に入り、右京のところに歩み寄った。
「悪い、悪い。伊勢に菅生。お前達も見るか?」
クラスメイトの一人が雑誌のようなものを広げて二人に差し出すと、右京はそれを手に取り、貴之と一緒に見た。
渡された雑誌を見て、二人は瞬時に石のように固まったのだ。
何と、彼が渡したのは男同士が舌を絡め合わせながらキスをしているシーンや、相手の胸をいじっているシーンなど、卑猥なものだったのだ。
ショックで固まっている二人を見て、クラスメイトが笑いながら言った。
「ショックだろ?その雑誌。」
「これって・・・ホモ雑誌?」
「そう!しかも、柔道部のロッカー裏から出てきたんだってさ!気色悪いだろ?」
どうやら、彼が所属している柔道部の部室を掃除していた時、たまたまロッカーの後ろに雑誌が落ちていたのを見つけて拾ったところ、ホモ雑誌だったのでクラスの友達に見せようと持ってきたようだ。
右京はショックを受けながらも、同時に自分の性癖の実態が形になっていると思い、動揺を隠せなかった。
だが、貴之は違ったらしい。
バシッと雑誌を閉じて、彼に返すと表情を青ざめて教室を飛び出したのである。
「貴之!」
右京は慌てて、貴之の後を追い駆けた。
二人の行き先は、屋上。
屋上を出ると、貴之は表情を真っ青にしながら、右京に告げたのだ。
「今の雑誌を見て、吐き気を覚えたよ。俺、同性愛って受け入れられないな・・・。」
「えっ?」
耳を疑ったしまった。
(今、貴之はなんて言った・・・?)
聞き返すのが怖い。
右京の心臓が突如、バクバクと物凄い音を立てて鳴り出した。
(怖い。怖い。怖い!!)
動揺している右京の様子も知らず、貴之が口を開いた。
「俺には理解できないよ!何で男と女という性別が異なっているのに、同性に対して同じようなことが出来るんだ?おかしいよ!」
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