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二年に進級し、貴之とは同じクラスになった。
貴之は笑顔で『同じクラスになれて、すっごく嬉しいよ!』と言ってくれたが、右京からすれば不思議な感じだった。
太陽と月。
太陽は貴之で、月は右京。
右京も貴之並にスラッとした身長と体型で穏やかな人柄が周囲には好印象らしく、本人が気付かないところで人気があるのだ。
それを貴之は知っており、右京と友達であるのを自慢げにしている。
二人が歩く度に女子は悲鳴を上げていた。
そしていつしか、二人は高嶺の花のような扱いをされているのを、全く気付いていなかった。
ラブレターの数では、貴之が勝っていたが、告白のために呼ばれるのは右京の方が多かった。
「おかしくね?何で手紙よりも告白の方が、右京が多いの?」
「俺が聞きたいぐらいだ。」
昼休みになると、二人は屋上に出ては一緒にご飯を食べ、話をしていた。
時々、午後の授業で出た宿題やレポートも片付いている。
教室や図書室でやるより、非常に捗るのだ。
貴之は帰宅部で、放課後はアルバイトに勤しんでいる。
大学進学のために、自分で学費を稼いでいるようだ。
話を聞くと、貴之の家庭はかなり複雑のようで、両親とうまくいっていないらしい。
本人いわく『上辺だけの家族関係だよ。』と笑っているが、瞬時に見せる表情がとても寂しく見えた。
余り他人の家族問題に口を出すべきではないと思った右京は、貴之に『話したくなったら聞いてやる。』という一言だけ告げた。
彼なりの優しさだろう。
自分の性癖を隠すために、ひたすら他人との関係を避けていた右京にとって、初めて自分から側にいて力になりたいと思えた人間だったのだ。
貴之という人物は。
これが、右京にとって苦悩する原因になろうとは、この時の本人は全く気付いていなかった。
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