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受話器を戻し、母親に貴之が来ていることを伝えて、右京はダッシュで玄関を開けた。
そこには、雨でびしょ濡れになっている制服姿の貴之が立っているのだ。
「どうしたんだよ!その格好!」
「はは・・・。」
貴之は笑ってごまかしているが、表情が真っ青だ。
右京はすぐさま彼を中に入れると、ダッシュで自分の部屋に戻り、大量のタオルを持ち出した。
そして玄関に戻ると、貴之の頭にタオルを被せて、ごしごしと吹いた。
残暑が残っている秋とはいえ、雨に濡れれば寒い。
右京はキッチンにいる母親にお風呂が出来ているかを確認すると、貴之を浴室に案内して風呂に入れた。
濡れた服は洗濯機に入れて洗濯し、乾燥機に入れて乾かした。
そして自分の服と下着を用意し、キッチンに戻ると母親に貴之が泊まることを伝えた。
「あら!たくさん作っておいて良かったわ。お父さんもそろそろ帰ってくるから、準備を手伝ってくれる?」
「ああ。判った。」
母親にお願いされ、右京は食卓の準備を始めた。
そうしているうちに父親が帰宅し、貴之が来ることを母親から聞いた彼は、しっかりとケーキをお土産に買ってきた。
タイミングが良かったのか、父親が帰ってきた途端に天気が大荒れし、テレビでは常に画面の上に気象情報が流れていた。
そして臨時ニュースも入り、台風の凄まじさを改めて実感させられる。
食卓の準備が終わったところで、貴之がお風呂から上がってきた。
貴之は三人に謝ったが、両親は笑顔で『いつでも大歓迎よ!』と温かく、迎えてくれた。
夕飯を食べながら楽しい談笑をし、食後の後はケーキと紅茶で満喫しながら、学校であったことを話しては笑っていた。
貴之はそのまま泊まることになり、二人は片付けを終わらせると部屋に戻った。
そして右京が風呂に入るために準備をしながら、貴之に尋ねたのだ。
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