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天井から滴る小さな水の雫が、ポタリと鼻先に当たるのを感じて、男は目が覚めた。
いつの間にか寝てしまっていたのだろうか…
男は、まだおぼろげ感覚で辺りを見渡すが、薄暗く何やらよく周り見えない。
一体ここは、何処なのだろう?
男には、ここが自分の家でない事ぐらいしかわからないでいた。
一体何故こんな所に?
自分の記憶を思い返してみる…そして、先程まで、仕事の同僚達と、居酒屋で飲み明かしていたことを思いだした。
確か店を3軒程梯子し、タクシーで帰る所途中だったはず…
しかし…タクシーに乗ってからの記憶が曖昧だ…
酔っ払って、どこかに迷いこんだのだろうか?
しかし、いくら思い出そうとしても、男にはその後どうしたかが、まったく思い出せないでいた。
…なにやら鼻に付く臭いがする…
錆臭い…
男は飲んでいたせいもあり、思わずその場で嘔吐した。
気持ち悪い…
とっとと家に帰って、布団で寝たいよ。
男がそう思っているうちに、段々と目が慣れ初め、周りが見えきた。
…どうやら、どこかの部屋の様だ。
窓はなく、見渡しても特に何もない。
あるのは錆て茶色くなった扉だけ…
ここにいても仕方ないよな…
男は酔っておぼつかない体を起こし、扉に手をかける。
錆付いたドアは、耳障りな音をあげながら、少しづつ開き始めた。
開いた扉の隙間から微かな光が差し込み、一瞬、男の目が眩んだ。
これで帰れる。
男がそう思った瞬間、男は自分の目を疑った。
扉の向こうは外ではなかっのだ。あるのはまた部屋…
扉から差し込んだ微かな光…それは外の光ではなく、部屋の中央に置かれたテレビから出る光だった。テレビの画面には砂嵐が映っているだけ…
どこだよここは?
男には、何がなんだか分からなかった。
「おはよう。草刈君」
いきなり自分の名前を呼ばれたので、男…草刈は思わず体を震わせた。
「だっ…誰だ!?」
辺りを見回しても、全く人の気配はなく。草刈は、すぐにテレビから声がしたのだと察した。
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