8人が本棚に入れています
本棚に追加
「戻れ！みんな戻るぞ！！」
一人の男はそう言いながら、先程までいた部屋に戻ろうと扉に手をかけた。
しかし、いくら開けようとしても扉は堅くとだされ、開くことがなかった。
どうやら戻る選択肢はない様だった。
恭子は床に倒れている浩太をずっと見ていた。
こ…これって…私のせい？
さっきまで、これで帰れるねって二人で話していたのに…
印象的だった整った浩太の顔は、今はそこにはない。
顔を貫いた矢を見つめてしまう…
…矢…？？
この矢は一体どこから…
恭子は壁を見渡す…
よく目を凝らすと、壁には無数の小さい穴が…
どうやら、壁全体に小さな穴があり、そこに矢が仕込んであるようだ。
「いてぇ！！」
男の腕に矢が刺ささるのを見て、一同は
ここはやばいと一斉に感じとった。
それは恭子も同じであった。
浩太のことを無理矢理に胸の奥にしまい、一気に階段を駆け抜ける。
それに続くようにして他の八人のメンバーは、恭子の後を追うようにして階段を駆け登りだした。
駆け登る恭子の後で、叫び声や鈍い音等がしたが、決して振り返らず、ただひたすら階段を駆け登った。
まるで、終わりのない階段を登るような感覚。
振り返れば、登りきれないだろう…
そう思わせた…
必死に駆け上がる階段の奥の奥…
恭子の視界の先に、扉が見えた。
神様お願い！間に合って！
恭子は、普段神になどお願いをしないくせ、今だけは必死に神に祈った。
最初のコメントを投稿しよう！