家族の涙

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久々に福岡へ帰って来ていた弟が、いよいよ新潟へと戻る日がきた。 弟が福岡に居たのは5日間。 その間、弟は地元の友達と連日連夜遊び回っていたし、親父は一足先に大阪へ戻り、母も仕事が忙しい。 そんなこんなで、俺達家族が4人揃って夕食を囲む事も、家族でどこかに出掛ける事も無かった。 だから、せめて駅まで弟を送ってやろう。 そう思った俺は、母と弟を乗せて車で駅へ。 車内では、弟が何度もため息を吐いては「ああ…休みが終わった~」と連呼している。 そんな弟に、母親は笑顔で話し掛ける。 「遊び回って楽しかったろ? ストレス発散になったんやないと?」 弟は「楽しかった」と答えて、どんな事をしたかを母親に聞かせる。 「…そしたら、アイツが酔いつぶれて…」 「釣りに行ったら…」 弟の話す内容に、母親は逐一頷いては時折笑い、車内は楽しい話が続く。 でも、段々と駅が近付くにつれて、口数も少なくなった。 そんな時だった。 「兄貴。 今度帰って来た時は、一緒に飲もうよ!」 唐突にそんな事を言ってくる弟に、俺は「そうやね」と軽く応えたが、その会話を聞いていた母は、嬉しそうにこう言った。 「アンタ等も、もうそんな歳になったとねぇ…」 それを聞いた俺は「そりゃ、もうすぐ30歳やけんな…」と言って苦笑い。 弟は「俺は酒に強い!」と自慢気だ。 そのまま、今度は中学や高校の頃の話をしようかとした時に、駅に到着してしまう。 少し残念そうな顔をしながら、弟は車から降りて、荷物をトランクから取り出す。 そして… 「行ってきます!」 元気良くそれだけ言って、弟は駅へと意気揚々と歩き出した。 俺は「またな!」と弟の背中に声をかけ、母は「行ってらっしゃい!」と小さな声で弟を見送った。
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