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弟の姿が見えなくなるまで見送り、母へ「帰るぞ」と声をかけて車に乗り込む。
その帰り、車内で母親が寂しそうに黙っていた。
寂しいのかなと思い、話し掛けようと母を見たら、母は静かに涙を流していた。
弟が就職して新潟へ行ってから3年。
親父も大阪だから、家族が揃うことは年に数回。
「アンタもおらん時は、家が急に静かになって、もっと寂しかった…。」
車内で言われたこの言葉で、俺はマジで「親って何だろう」と思ってしまった。
大学まで必死に育ててくれて、社会人になって県外に出たら、たまにしか会えない。
学生までの当たり前が、社会人になれば全く無くなる。
それでもずっと俺や弟を応援してくれた母は、みんなを1人で送り出しては、1人で泣いていたのかなと思うと…、親って凄いなと改めて思った。
高校くらいまでは、親は自分達の主張を全く聞いてくれないとか思っていたが、俺も親の気持ちを分かっていなかった。
“心配だから意見する”
それは、誰に対しても言える訳じゃない。
俺は、友達に対して言いたい事があっても躊躇(ちゅうちょ)してしまうし、会社で仲が良い同僚に対しても、言いたい事が言えない。
それと同じなのかも知れない。
例え、相手が親でも息子でも、言いたい事を言うのは難しい。
でも、俺の高校くらいまでの記憶には、良く怒る母親と父親が出てくる。
その頃から…
ずっと、母は心配してくれていたのだろうか?
応援し続けてくれていたのだろうか?
きっと、幼い頃と今と、母の態度は変わっていない。
だから思うのだ。
俺は、心配してくれる両親のもとに生まれたんだと…。
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