我が家の戦争

3/6
270人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
そんな我が家が反旗を翻(ひるがえ)したのは、ある事がきっかけだった。 それが、祖父の死。 大腸ガンが全身に転移し、祖父は長い間ガンと闘い、亡くなった。 その祖父が闘病生活を送っている間、祖母が看病を全くと言って良いくらいしなかった事と、寝たきりを余儀なくされた祖父の目の前で、 「アンタは末期ガンたい! 助からんたい!」 と大声で言い放った事が原因だった。 「必至に闘病している人間に対して、家族が言って良い言葉ではない!」 父は、そう言って祖母を激しく怒ったらしいが、祖母には何が悪いのか理解できなかったらしく、その後も度々同じ事を祖父へ言っていたそうだ。 そんな事を祖母から言われた祖父は、一体どんな気持ちだったろう…。 今となっては、祖父の気持ちを知ることは出来ないが、何にせよ“その言葉”で、父も遂に我慢の限界を超えたのは間違い無い。 祖父が他界してから程なく、父は祖母に言ったそうだ。 「もう…この家には来ない。 家の行事も手伝わん!」 それ以来、我が家は誰一人として祖母には会っていない。 いや…、会っていなかった。 祖父が他界して、一年程経ったある日の事、父の兄弟から頻繁に電話がかかりだした。 それは、時間も関係なく、自宅・携帯・FAXと、あらゆる手段を使って連絡を取ろうとするくらいしつこく、最初は無視していた父も、諦めて電話にでた。 その時、祖母の様子が変だと告げられた。 父は「関係無い」と言って、一旦は電話を切ったのだが、その後も何度となく掛かってくる電話と、兄弟からの一言。 「長男だろう」 その一言で、父は1人で祖母の様子を見に行く事にした。 「やっぱり親子やね。 お父さんも、口では何だかんだ言いながら、お婆ちゃんが心配なんよ。」 祖母の家へと向かう父を見送った後で、俺に向かって言った母の言葉だ。 この時までは、母も俺も、あの祖母の事だ。 どうせ、大した事はない。 直ぐに帰ってくる。 そう思っていたが、父はなかなか帰って来ない。 どうかしたのかと俺達が思い始めた時、父から電話が掛かってきた。 「確かに変だ。 布団に寝たきりで、起き上がれないみたいだ。」 それが、父の第一声だった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!