我が家の戦争

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慌てたのは俺と母だ。 いきなり電話でそんな事を言われても、状況が分からなければ対処しようがない。 母は、どうしたら良いのか分からず狼狽える父を落ち着かせ、俺に向かって祖母の様子を見に行くと言い出した。 だが、車は父が乗って行ってる為に自家用車は無い。 必然的に、俺が車を出す事になり、母を乗せて祖母の家へ…。 医療関係の仕事をしている俺なら、祖母がどんな状態にあるのか、多少の診断が出来ると言う事と、休日でも開いている病院を知っている。 それが理由で、母から「連れて行って欲しい」と言われたのだが、俺は仕事柄休みがない。 この日も、2週間ぶりの休みだったせいもあり、俺が不機嫌な顔をしていたからか、母は車の中で何度も「ゴメンね」と謝っていた…。 その後、祖母の家に着いた俺達が見たのは、立つ事も出来ずに床を這(は)って進む祖母の姿だ。 その姿を見て、最初に思ったのは「脳こうそく」だったが、両手に力も入るし、かつぜつも悪くない。 手足の痺れもなく、めまいも無い。 医者じゃない俺には、何の病気か分からず、結局病院へ連れて行く事にした。 病院へ連れて行った後も大変だった。 まず、動けない祖母を抱えて運ばないといけない。 次に、いつの間にか痴呆が進んでいた祖母は、昨日何をしたのかすら定かではなく、日頃どんな薬を服用していたかも分からない。 結局、病院で4時間以上検査をしてもらったが、詳しい病気が分からなかった。 仕方無く、その日から祖母は我が家へ来る事になり、1年近く会うことの無かった祖母が、突然我が家で生活する事に…。 「他の兄弟(叔父や叔母)は、何をしていたんだろう?」 この時に俺が思った事だ。 祖母の家の近くには、叔母の家がある。 叔父も、一月に一度は必ず祖母の家へ行っていたらしい。 そんな話を俺は聞いていた。 だからこそ分からなかった。 何故そんな風に顔を合わせていたはずの叔父や叔母は、祖母の容体が悪い事を知りながら、何もしなかったのだろうか? 「体調が悪い」と言う祖母を、何故病院に連れて行かなかったのだろうか? 面倒だったのか? 分からなかったのか? 口だけで、祖母に会いに行っていなかったのか? 色々な事が考えられたが、そんな事を考えても始まらない。 絶縁状態だった祖母は、今我が家に居るのだから…。
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