失明共有

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「ジリジリジリジリン」 目覚まし時計の耳を引っ掻くような音で、目を覚ました。午前8:30分― 気怠い体を起こし、冷蔵庫から水を取り口にする。朝食なんて物は、ここ数年食べてない。朝飯を抜いてきても、祟られる事なく生活(い)きてきたのだから大丈夫なのだろう。 直ぐさま高校の制服を身に纏い、自宅を後にし登校する。吐く吐息が白く濁り、異常な寒さを確認していると… 「おはよう譲刃さん」 後ろから肩を叩き挨拶をする黒沢白夜の声がした。 「お前…パンダか、用がないなら声をかけないでくれる!」 厳しい口調で言葉を返す。私はある仕事柄、他人と関わることを極度に嫌う。ちなみにパンダというのは、名前に白黒がはいっているため皆からそう呼ばれている。 「いきなり邪険に扱う必要はないのに……でも俺のこと少しは知ってるんだ。嬉しいよ。譲刃さんも俺のことそう呼ぶのはすこし意外だったけどね」 五月蝿い黒沢を振り切るため速く歩いた。ついて来る様子はなく、安心し鞄からMP3、イヤホンを取り出し音楽に浸る。 学校に着くとホームルーム、授業が始まるがそんなことは、全く聞いてはいない。考えるのは、今おきている殺人事件についての考察ばかり。そう、こんな事ばかり考えている私はクラスメートと一切話しをせず浮いた存在だ。そこに今朝いきなり話しかけてきた黒沢は、一体何を考えているかさっぱり分からない。 そんな事を考えているといつしか全授業が終了する。いつもこんな感じの味気無い学校生活を送っている。すぐに教室を立ちある場所に向かう。警察署内にある不可解な犯罪を扱う能力殺人班。大体この繰り返しの生活である。「ガチャリ」 事務所に入ると七条が、事件資料をまとめている最中だった。 「おお、来たか詩音。早速で悪いが見てもらいたい資料がある」
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