初恋は桜と共に。

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秋に特有の僅かな冷たさが、体に心地よい。 「おはよう」 何時ものように、少年は姿を現した。 寝ぼけた眼は非常に間抜けだ。 頭の上に枯れ葉を乗せていたので、さっと払ってやる。 「いくか」 うん。 日常、それは何時までも続く常。 そして、何時か必ず終わる常。 あるいは人は、それを運命と呼ぶのかもしれない。 雪は世界を無音にしていた。 桜は雪の花を咲かし、海はしずしずと妖精達を受け入れていた。 ただ静かに踊る白の中で、私は泣きそうになった。 季節が巡り、終わりを告げようとしている。 もうすぐ春が来てしまう。出逢いと別れの春が。 ふと、顔を上げると、そこに少年がいた。 本人に自覚があるようには見えないが、今にも泣き出してしまいそうな、不安な表情をしていた。 だから。 私は、私の不安を隠した。 私は不安から逃げた。 後悔すると、分かっていたのに。 私は自分の思いから逃げ出したのだ。 川原学園大学は、何処もかしこも桜が咲き乱れていた。 否応なしに、桜が少年の事を思い出させる。 これから始まる四年間に、少年はいない。 初恋は、桜と共に、散っていく
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