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ただ、普通でありたいと思った。
なのに、なのに。
そこは荒野だった。
何も無い。
ただ地面があるだけだった。
「な…ん…で……」
さっきまであったのに。さっきまで触れてたのに。さっきまで話してたのに。
「なんで…!」
彼女は居た。
荒野の中、たった一人。
「どうして…」
どうして、神様はこんな力を与えたの…?
●
眩しかった。
カーテンの隙間から差し込む朝日が顔に直撃していた。
「ベタすぎるが、過去の夢にうなされたよ。まったく…」
ベルを鳴らしそうになった目覚まし時計を先手で止め、ベッドから這い出た。
「…金曜日か、今日頑張れば連休ね」
適当に朝御飯を済ませ、制服に着替える。
「ちなみに私は学生だ。成績は赤点ギリ、友達は一人居る。…寂しいな私。 って誰に言ってるんだか」
家を出ると、森が広がっていた。
微か奥に街が見える。
「…独り言だけど、別に変じゃない。 むしろ沢山のビルが並んでるってほうが、この世界じゃ異端だよ」
そう言いながら、彼女は軽い足取りで森を歩いて行く。
暫くして街に到着し、学校へ向かう。
「アルバヘズ学園。この大陸でもかなり有名な所だね。入るのに相当苦労するらしいけどさ、私は裏口なので無関係。…いろいろ訳有りなんだ。気にするな」
彼女は独り言を続けながら、やがては教室に着いた。
「おはよー」
返事は無かった。
だよねぇ と呟き、自分の席に座る。
「やーやー」
隣の席の人が挨拶をしてくる。
「おはよ。マーリだけだよ、シカトしないでくれるの」
「リッテは悪い噂が数千人くらい一人歩きしてるから、誰も関わろうとは思ってないもん」
「毎日それ聞くよ」
「朝の日課だねー」
などと会話していると。
「お前ら座れー! チャイム鳴り終わってるぞー!」
先生が来た。
今日も暇な一日が始まった。
…と思ったけど、そんな事は全然無かった。
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