【正門】

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その日、街は真っ白な雪で覆われていた。 僕は目の前にのびるS字坂を上ってゆく。 口許を手でおおった。 白い息がこぼれる。 今から≪起こること≫を想像してみる。 みんな驚くだろうか。 そんなヒマないかもしれない。でも一一 まさか、 自分の身に起こるなんて。 そう思うに違いない。 誰も想像していない。 誰も対処できない。 雪が舞い上がって。 きらきら光って。 それで。 右手を見る。 住宅地がひろがっていた。電信柱のむこうに桜の木が並んでいる。 僕は学校へと向かう。 正門が見えた。 今から≪起こること≫ それはあとすこしで始まるだろう。 すでに準備は出来ている。
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