『Doll House』

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この状態でクラスに飛び込んだらどうなるの? 確実に『伝説の人』じゃないの? 私は急ブレーキを掛けて、目の前の喫茶店に入った。 もう、止め止め。 欠席でいいや。 単位なんぞ知るか。 寝癖直そう。 コーヒーを頼んで、トイレを借りる。 狭い洗面所でバッグを広げ、必死に寝癖直しにかかる。 その時だった。 見詰める鏡の私が、薄気味悪い笑いを浮かべた。 いくら抜けてる私でも、自分の今している表情位は判る。 ――私は、『笑ってなんかいない』 「何これ……!」 叫びを必死に飲み込む。 鏡の中の『私』が、ゆっくりとその手を伸ばして来たのだ。 そして―― 信じられない。 鏡の中にあった『手』が―― そこを突き出て、私の肩をがっしり掴んだ。 私は恐怖で心をがんじがらめにされて、叫びたくても震える喉から空気が漏れるだけだった――
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