『Doll House』

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さらさらと流れる小川に、点々と構える緑から聞こえる小鳥のさえずりのアンサンブル。 優しい風が吹いて、草花が踊る。 小川には小さな橋がかかって、煙突付きのレンガのお家に続いていた。 何て素敵なんだろう。 まるで、人形の世界に飛び込んだみたいだ。 「成る程、だから『Doll House』ね」 花屋敷さんは、私の『箱庭』だと言った。 確かに。 これが現実の風景な訳がない。 だって、木も花も、空も川も全て『パステルカラー』だもん。 こんなの、有り得ない。 ただ、さっきのホールと違って、心が落ち着く―― それだけは救いだ。 「……で、何すればいいんだろ?」 私は思わず独り言を零す。 なにせ、ここが私の『箱庭』ということ以外何も分からないのだ。 「そもそも、箱庭って何なの? ってか、寝癖も直してないし」 なのに、スポットライト浴びたし。 私はやるせなくなって、パステルカラーの草花の上に膝を着いた。
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