『Doll House』

9/42
前へ
/469ページ
次へ
暖かいけれど、どこか寂しいこの場所に独り佇む私の心に、何とも言えない悲しさが溢れてくる。 だって、帰り方も分からない。 だって、誰もいない。 私の頬に、一筋涙が伝った。 「お願い……私が元居た所へ帰して……」 呼び掛けても、返事がある訳が無い。 私は益々やるせなくなって、地面に突っ伏した。 「何で……こんなことに……私を……私を返してよ!」 泣きじゃくりながら、叫んだ。 その、瞬間。 地中から黄金のステッキが飛び出した。 「ナニッ?」 跳び起きる私の手に、自ら向かうように収まるステッキ。 それはてっぺんに太陽の装飾を施して、ちょうど円の部分が時計になっていた。 アンティーク調で、中々カワイイじゃないか。 ――違う、違う。 「これは……何なの?」 (私は貴女の心の鍵です) は? 今、喋りました?
/469ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加