録音

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俺には変わった趣味がある。 ICレコーダーを使って、友達の会話を録音することだ。 決して犯罪目的で使っているわけじゃなく、会話の中で出てくる面白い話や怖い話を録音したいからしている。 録音の仕方は単純で、ICレコーダーのボタンを押して、ポケットに入れてほったらかす。それだけ。 まぁ、そんなこんなで、会話を集めていたんだ。 ある日、いつもの様に録音しつつ遊び、帰宅した。 部屋に入り、大学のレポートを片付け、ふと時計を見ると、深夜1時を回っていた。 寝ないとなー、つか風呂入ってなかったなー、とか色々ぼんやりしていた、その時だ。 部屋をノックする音がした。 それから、母の声で 「アイスクリームあるわよー。開けなさーい。」 と、聞こえてきた。 珍しいな。わざわざそんなこと伝えにくるなんて。 適当に返事をしようとしたら、ドアノブをガチャガチャ回す音がした。 驚いて、視界がドアから離れなかった。何をしているんだ? 「おい、何して」 「開けなさい」 ドアノブを回す音とノックの音が、同時に部屋に響く。 「開けなさい」 「開けなさい」 「開けなさい」 立て続けに母の声が聞こえ、ようやく違和感に気付いた。 もう、母は寝てる時間じゃないか。 一瞬でパニックになった。ドアの向こうにいるのは誰だ?何故執拗に開けさせようとしてるんだ? 疑問が浮かべば浮かぶほど、脂汗がにじみ出てきた。 その俺に追いうちをかけるように、今度は低い男の声で 「開けろよ」 「開けろよ」 「開けろって言ってるだろ」 と聞こえた。 とにかく耐えるしかない、そう考えた俺は、ひたすら男の声とドアから発してる音に耐えた。 一時間近くたった辺りで、それまでの音が一切止んだ。 恐る恐るドアを開けると、いつも通りの渡り廊下が見えるだけだった。
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