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「そっか、分かった。
どうしても話したくないんだったら、それでいい。俺はお前が話したくなるまで待つから」
そう言って薫はニカッと笑った。
(……変な奴)
如月は思いつつも、何故か気分は悪くなかった。
「あっ、そうだ! 林檎食う? 見舞いに買ってきたんだ」
「いや、別にいらないわよ」
如月は手を払って拒否する。
「そんなこというなって? せっかく買って来たんだし、腹減ってんだろ?」
薫は言いながらもナイフを鞄から出して、林檎の皮を剥き始めた。
「だから、いらないわよ。それに別にお腹空いてないし」
如月がそう言うと同時にお腹がグゥーとなった。
(なんてタイミングの悪さなの)
顔を枕に埋めて、耳を真っ赤にしている。
「ハハッ、体は素直だな?
昨日から半日寝てたから腹も減ってだろよ。ホラッ」
そう言って、剥いた林檎の乗った皿を渡す。
「…………戴くわ」
渋々? 皿を受け取り、林檎をフォークで刺してシャリッとかじった。
「さてと、お前が起きたことだし俺は帰るわ。
しばらく安静にしてろよ? 麻酔があと1日もすれば完全に切れるらしいから、いやでもまともに動かせないだろうけどな」
ニシシッと笑う。そして、如月の碧い艶のある髪をクシャッとする。
「何帰るの? ってか、ウザイ」
髪を乱されたことが、相当気に入らなかったらしく、手ぐしで直しながらそう聞く。
「あぁ、昨日から丸一日寝てねぇからな。さすがに寝ないと保たんわ」
薫は頭を掻きながら苦笑した。
「あんた相当のお人好しなのね? それはあんたの勝手だから御礼は言わないわよ」
如月は馬鹿にしたように笑いながら、そっぽを向く。
「相変わらずひでぇなお前」
薫は呆れたように言う。そして、
「じゃな。また明日来るから、大人しくしてろよ」
そういい、ドアを閉じる音が聞こえた。
「……ありがと」
聞こえる訳ないかと、自分に苦笑して、また布団に籠もった。
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