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――次の日
「はっ!? あいつもう退院したんですか?」
目の前のナースは斜め下を向きながら。
「えぇ、『もう体は大丈夫ですから』っていって昨日の夜に急にお金を置いて出て行かれました」
「でも、あいつ。麻酔でまともに動けないんじゃ?」
ナースは指を顎に当てて俯く。
「その筈だったんだけど、朝精密検査の結果を調べたところ、彼女どうやら超回復体質らしいの」
薫はハテナマークを浮かべる。
「ちょうかいふくたいしつって?」
「超回復体質とはね、常に自分の体に治癒能力の魔法を発動している体質のことね。昔、命の危機や、元来身体的に弱い人が自然と発症するらしいけど。まだ魔法医学では詳しい解明には至ってないの」
「そんなのがあるんですか?」
「えぇ」
薫は
(あいつ変なのは、髪の色だけじゃねのかよ)
と悪態をついていた。
薫は連ねて愚痴を零す。
(ったく、あいつ何やってんだよ。あんだけ言っといたのに)
しかし、愚痴の連鎖をナースが中断させる。
「あっ! それとあなたに手紙を渡して欲しいと。これを」
そう言って、ナースは薫に手紙を渡した。
(なんて書いてあんだ?)
そう思って、封筒から手紙を取り出し、広げて目を通すとこう書いてあった。
【ありがとう、助かったわ。
そして、さよなら、私のことは忘れて。
あなたのためにならないから】
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