ー大協会聖域ー約束と曇り空

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 そして、薫は【魔術の巣窟】まで走り辿りついた。  店のカウンターには腰の曲がったお婆さんが座っている。レジに並ぶ商品と座高がほとんど同じで姿はほとんど隠れている。 「婆ちゃん、陣を借りるよ!」  軽く一方通行な了承を貰い、手を上げる。 「おやおや、また無断使用かい。いい加減、金でも取ろうかね」  お婆さんはケケケッと不気味な笑いをする。昔話の妖怪小豆研ぎ、ホラーなんかで出てくる口裂け女の劣化(老化)版といったところだった。大きな椅子にドシンと座っている様子は、ここのヌシという感じだ。 「だから、聞いたろうが!無断じゃねぇての!年で耳イッテんだろ!」  そう叫び、薫は魔法陣の上で片膝をついて、手を添える。そして術式を唱えた。 『風の足跡,氷の涙,炎の憤怒,土の巨兵。 方角は南,座標はRB, ディメンジョン!!』  そう唱えると同時に体は緑色の光に包まれ……、そして消えた。
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