-シルクロード-平凡な日常と非凡な衝動

3/12
350人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ
 ――シルクロード。  親子連れや若者、カップルが多く、先から先まで人でごった返している。  シルクロードには店舗が充実しており、服屋、本屋、デパート、雑貨屋、レストラン、ジュエリーショップなどなど、様々な店が展開している。  そして、シルクロードの中央には全てを見下ろせる【グランドポール】が君臨する。 グランドポールは魔法回線を送る無線塔となっている。 夜にはライトアップなどしてとても綺麗らしい。  ちなみにこのシルクロードにも、【魔術の巣窟】はチェーン店として、堂々とそびえ立つ。  意外にもあの奇妙なお婆さんが社長なのは誰が言うまでもなく有名だ。  いまや、【魔術の巣窟】は魔術師にとっての必要不可欠なパーソナリティである。  その【魔術の巣窟】の前で一人ポツンと立っている女の子がいた。  そう、西宮杏奈(にしみやあんな)である。  鞄を両手で膝の前で持ち、看板にもたれかかっている。 (遅いな~。椿山くん)  段々、来ないのではないかと疑惑の念を出していたそのときだった。 『ガッシャーン』  とてつもなく、大きな音ともにその待ちわびた男が派手な登場をした。 西宮は手を口に添えて、クスッと笑うと鞄からハンカチを出してこう言った。 「また、朝と同じ登場の仕方だね? いい加減空間移動くらいまともに座標出来るようなったら?」  そう言って、ハンカチを手渡す。 「ハハッ、どうも気持ち上に座標が行っちまうんだよな。サンキュー」  薫は貰ったハンカチで顔を拭き、制服をパンパンと叩き埃を飛ばす。 「さぁ-て、行くか! どこがいいんだ?」 「あそこの曲がり角に新しいお店がオープンしたんだ。僕はそこに行きたいんだよ!」  西宮は笑顔で、薫の制服を引っ張って、早く早くと急かす。 「分かった、分かった、急がなくてもパフェが逃げないから」  なんとか抵抗しているが、パフェに対する気持ちが相当強いのだろう。ぐいぐいと制服を破く勢いの力で引っ張ってくる。 「それが逃げちゃうの! パフェは1日20食限定なんだから! 早く行かないとなくなっちゃうよ~!」  そう言ってまた涙目になる西宮。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!