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「誰だ……お前……」
汗が滝のように吹き出て、自分のドクンドクンという脈打つ音が聴こえる。
「これはこれは、失礼しました」
紅い瞳と漆黒の髪をした男はそう言って腕を懐で回しながら、ジェントルマン風にお辞儀した。
「私の名前は、夕凪瀬羅(ゆうなぎらいら)と申します。失礼ですが、あなたは?」
謎の男こと夕凪瀬羅は表情をほぼ変えることなく自己紹介と同時に質問した。
「……俺の名前は椿山薫だ。お前ここで何をしている」
薫は止まることのない汗を拭いながら質問を続ける。
「いや、ちょっと探し物をね。それにしてもこの状況下で動ける人がいただなんて心外でした」
両手を顔の横に上げて、やれやれと分からないというようなジェスチャーを取っている。
「……それってどういう『仕方ないですね』」
夕凪が薫の質問を途中で遮り話し出す。
「まぁ、限定結界の影響を受けないってことは、自覚がないにしろ何か力があるってことなんでしょうから、危険分子には変わりないですね」
話についていけない薫は、
「さっきから、何言ってんだよ! こんなもんつくって何しようってんだ!?」
「少し、五月蝿いですよ。
要は君はここで奇遇にも私と出会ってしまったことにより死ぬってことですよ……」
口は笑っているが、目は冷酷な瞳のまま、指にはめられたジュエリー(宝具)に魔力を込め始めた。
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