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同じテンポを刻み階段を降りる。
足を踏む振動が二階から一階に伝わって妙に音を響かせる。
そして、薫は階段を降りきって柱に掴まりながらクルりと顔だけを覗かせる。
(……ホッ、いないか。どうせあいつと買い物かどっかだろう。いたら厄介だもんな)
薫が心配しているのは恐らくお母さんだろう。
夏休み最後の日に課題も終わってないのに、ゲーセンに行くことを知られれば、怒られて部屋に缶詰めにさせられるのは目に見えていた。
そのままリビングに足を運ばせると、テーブルにアンパンが袋に入って置いてあった。
リビングはテーブルにテレビ、冷蔵庫、イグコンなど一般的な家庭製品の揃ったシンプルな並びだ。
薫はアンパンの入った袋を口で開けながら、右手でリモコンを掴んでテレビの電源ボタンを押した。
リモコンを置いて、口を開いた袋に右手を突っ込む。
『……ん、こんにちは。今日の撮影はなんと若者の集い場シルクロードに来ています。さて、今日の天気は晴れのちくもり、傘の心配はいらないかもしれませ……』
テレビをつけてはみたが、アンパンで喉が詰まるので冷蔵庫から牛乳を取り出して飲んだりしていたのでほとんど聞き取れていないだろう。
牛乳を飲み終えると、冷蔵庫をまた開けて牛乳をしまいバタンと勢いよく閉めた。
ゴミになった袋を捨てて、薫は時計に目を移す。
(……13時27分か。そろそろ行くかな)
時計に反射した自分の顔に白い髭がついていることに気付いて、手で拭き取る。
そして、薫はリモコンを掴みスイッチを切って、家を出るべく玄関に向かった。
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