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薫は不思議に思いながら単純にこう思った。
「こんな雨ん中何やってんだあの馬鹿は?」
見知らなぬ相手を馬鹿にするが……
「……ちょっと、あんた聞こえてるわよ。
普通雨の中女の子が濡れてたら……
『大丈夫ですかこの傘を使ってください!』っていうでしょうが!?」
「俺はそこまで優しかねぇし、大体俺も傘持ってねぇって見れば分かんだろ。
ってか、その前にこの雨ん中なんで聞こえんだよ?」
「あんた馬鹿?
思念を読んだに決まってじゃない。あんた念波強すぎるから、筒抜けなのよ」
「はっ? 雨ん中傘差してない奴に馬鹿呼ばわりされたかねぇ~よ」
「あんたも一緒でしょ!」
「グッ……」
まさに正論を言われ、言い返せない薫。
「ってかさ、お前もそんなとこ居ねぇでこっちで雨宿りしろよ。風引くぞ!」
「ハッ、馬鹿に心配されるよ……うじゃ、私も落ちた……もの……ね」
そう言って苦笑する少女。
「なんだと!?」
そして、当然の如くキレた。全く回路の短い脳だ。
「……、」
急に俯いて、少女は黙ってしまった。
「なんだよ? 急にシカトかよ? 愛想悪すぎんだろ。ってかお前早くそんなとこいないで来いって」
薫はバス停の屋根から出て打ちつけるような雨を受けながらも、少女の傍まで行き、肩を掴む。
するとヌルッという感触が手に伝わった。
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