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肩を掴まれた少女はズルリと木を背に滑り落ちた。
「えっ……」
思いがけないことで、驚きを隠せない。
「コレ……って血…………かよ……!?」
自分の手についたものをを、瞳孔を開き見入る。
雨がすぐに消し去ったもののそれは確実に人の血だった。
そして、それが分かってからの行動は早かった。
「オイッ! お前大丈夫かよ!!」
強く、強く幾度となく呼びかけるも返事はなく。
ただ、足元には雨で薄れた血が流れて広がっていた。
(やべぇ、とりあえず手当てしねぇと……)
そう思い、電柱から少女を起こすと肩から背中にかけて紅い滲みが広がっていた。
(だから、コイツ背中を後ろにして持たれかかってたんだ……)
焦りと驚きが手を震わせていく。
(落ち着け俺……
コイツを助けやれるのは俺しかいねぇ。
俺が動けば助かるんだコイツは)
そう心に決心し、少女の腕を肩に回し、勢いをつけて背負い走りだした。
……このときは思いもしなかった。
この背負ったものは少女だけではなく。
運命の十字架をも背負うことになろうとは…………
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