350人が本棚に入れています
本棚に追加
――碧髪の少女が男と話している。
顔はぼんやりしていて分からない。それどころか、少女と男以外全てが煙のように不安定で霞のごとくぼやけていた。
そして、口が幾度となく開くのが確認出来た。徐々に声すらも明確になる。
『……お前は、もう十分役にたったよ……』
『えっ?なんの事……』
『……世界の為なんだ許せ』
ザシュッと何が突き刺さる音ともに、少女の碧髪は元来の色を失い紅く紅く染まっていた。少女の視線が男から自分の腹部に移る。その瞳は揺れて、濡れてぼやけていた。
『……ねぇ……、嘘……よね? こんな……ことって』
無残に突き刺さるナイフを見つめる碧髪の少女はそう呟いた。言葉を吐き出す前に血が唇を零れ、頭が落ちてガクッと跪(ひざまづ)いた。
それでも、少女は男を見上げた。願望の、切望の、虚空の答えを期待したのだ。自らの惨事すらいとまずに。
だがしかし、男は目を瞑り首を横に振るう。男は唇を噛み締めていた。
少女はそれを確認し、瞳を紅蓮と碧緑に混じる髪で隠した。そして、間はほとんどなかった。突然、声を発する。
『……アハハ、アハッ、アハッ、アハハハハ、みんな壊れちゃえ、こんな世界!!』
彼女は狂ったように笑いだした。そして光を纏い、やがてそれは全てを包み込みんだ…………、
最初のコメントを投稿しよう!