濁流

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『これ見てもまだそんな事言うの?』     『落ち着けって!』     『だってコレ、証拠なんだよ! ケンちゃんが浮気したって証拠なのっ!』     そう言ってユカは泣き崩れた。     『参ったな……なんでそれが浮気したって事になるんだよ。身に覚えが無いって!』     『昨日、雲酷斎とホテル行ったって子がいるのよ!』     『アホか、そいつの妄想だって!』     『ユカもそう思ったよ! ケンちゃんを信じてたから! でも、その子が言ったの、これをポケットに入れたって!』     『お前どうかしてるぞ!』     ユカは、一歩も引く様子は無い。   こんなに俺は信用無いのか?     『今朝、スーツ見たら入ってた……お願いケンちゃん、遊びだった、ゴメンって言って? そうしたら、我慢するから、ね? お願い』     『馬鹿言うなよ! やって無いものはやって無い! 大体そんな事言う奴は誰なんだ? モバで知り合った、薄っぺらい友達もどきを信じて、俺を信じられないのかっ?』     『もういい』     そう言うとユカは、玄関に向かう。     『こんな時間にどこ行くんだ!』     『もう……ここにはいられない』     『待てっ』     『触らないでっ!』     ユカ……なんて事だ。   『だったらお前が残れ。少し頭を冷やしてもう一回話そう、俺が出てく』     俺は、そう言って部屋を出た。   公園のベンチに腰掛けて、煙草に火を点ける。     モバ友? まさか本当に、そんなモノと俺を天秤にかけるのか? ユカにとって俺はその程度なのか?     クソッ! 頭が痛い。       『ケンちゃん……』   振り向くとユカが立っていた。       『ウチ……戻ろう?』     『ユカ……』     部屋に戻っても、ユカは無言のまま。     『俺、ここで寝るから』     ソファで毛布を被る。       ユカが寝室のドアを閉めたと同時に、突然外から物音が聞こえた。     『な、なに?』     ドアを開けると、数人の男が立っている。      『22時34分、身柄確保! 連行します』     テレビでしか聞いた事のない台詞だ。
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