14999人が本棚に入れています
本棚に追加
『おいっユカ!』
『来ないでっ!』
『大丈夫、何も心配無いって!ここ開けろよ、なっ?』
ユカはベッドルームに鍵をかけていた。
『お願い、今は1人にして……もう何が何だか分からないよ』
ユカ……無理も無い。
俺だってパニックだ。これ以上2人で話しても何も解決しそうにない。
何でこんな事になっちまったんだ、悪いのはいったい誰なんだ。
抗えない強い力に押し流されそうで、俺は苛ついていた。
うっ……頭が。
割れそうだ……。
…………。
ユカ。
俺のユカ。
誰にも渡さない。
どうやら俺は、床で寝てしまったようだ。体中が痛い。
仕事に行かなきゃ。
周りを見渡しても、ユカはいない。いつもならとっくに朝飯が用意されてる時間なのに。
俺はベッドルームをノックした。
『ユカおはよう。俺会社行くよ』
慌てて動いている様子が聞こえる。
『痛てて……』
起きてはいるみたいだな。
『ユカ、帰ったらもう一度ちゃんと話そう。俺は浮気なんてしていない……愛してる』
俺は身支度を済ませ、玄関へ向かった。
見送ってはくれないか。
駅に向かいながら携帯を開く。
ユカは昨夜、モバで俺の事を相談していた様だ。無責任で身勝手な返答が板に並んでいる。
こんな誰でも見る事の出来る場所での台詞に、何の重みも無いってのが分からないのか?
俺だって見るかも知れないのに……。
もしかしたら、それすら折り込み済みか。
このSOSは、本当は俺に向けられてるのかもな。
早く解決しないと、俺達の関係そのものが濁った流れに飲み込まれてしまいそうだ。
俺はこんなにユカを愛しているのに。
『おはようございます』
会社に着くと、伊東が自分の机を雑巾掛けしていた。
余程昇進がうれしいんだな。
『やあ、早川君おはよう』
早川君?
とうとう君よばわりかよ。
鬱陶しいな。
そう言えば、今日は木戸支社長が来るんだっけ。
俺から大阪行きを志願しようかな……。
最初のコメントを投稿しよう!