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朝一から、課全体のミーティング。
『1人1人の力は弱いが、結束すれば何倍にもなるっ! 総合力で契約を勝ち取ろうっ!』
いい加減にしてもらいたいものだ。張り切る気持ちは分からないではないが……。
俺達ゃ営業は、個人技が優れてなきゃ意味がない、出来ない奴が何人集まろうが、それは文字通り烏合の衆。
朝から笑わせてくれるぜ。
『早川係長! 何かおかしいですか!?』
おっと……。
『いえ、すいません』
怖い怖い。
ダラダラと続くミーティング中に、中田部長が現れた。
『何やっとる! さっさと外回り行かんかっ!』
(そりゃ言うわな)
慌てて立ち上がり、号令を出す伊東。
『さあ! 1人1件契約を持って帰ろうっ!』
お前が一番心配だって~の。
『部長おはようございます。え~、昨日までの進捗状況なんですが……』
わざとらしく報告を始める伊東を、部長が一蹴した。
『日報に目を通しているから分かっとる! 自分も外回りせんかっ!』
伊東は今月ボウズ、そりゃ言われるわ。
『い、行って来ますっ!』
逃げるように飛び出して行った。
『よう、エース! 余裕だな』
伊東が出て行くのを確認し、部長が俺に近付いてきた。
『さぁ、どうですかね? 腐って仕事してないかも知れませんよ?』
『腐る? そんなタマじゃないだろ?』
『どうでしょうね?』
『ふっ。ところで早川君、昼には木戸支社長が見えるが……』
『社に残っていろと?』
『出来ればな』
『分かりました。じゃあ、今朝出しそびれたこれは、今日契約した事にします』
俺は昨日取ってきた、契約の書類を鞄から出した。
『君には誰もかなわんよっ! はっはっはっ! まぁ、支社長が見えるまでゆっくりしたまえ。営業マンは結果さえ出していれば、サボったって構わん』
そう言うと部長は営業課のオフィスを後にした。
じゃあ、お言葉に甘えてゆっくりさせてもらおうかな。
『早川係長! 4番に外線です』
っと……そうも行かないか。
『お電話代わりました、早川です』
『昨夜はどうも』
電話は警察からだった。
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