彼女

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『そう堅苦しく考えるな。頭の片隅にでも置いておいてくれ』     簡単に重たい荷物を背負わせる……。   一気に憂鬱に追い込まれ、俺はオフィスに戻った。     『早川係長。マルミ食品の山崎様からお電話です』     浸る間もなく、瞬くウチに現実へと引き戻された。モノの二十分オフィスを留守にしただけで、デスクはメモで埋まっている。   時計は午後三時を少し過ぎていた。   『外でるわ。帰りは……。多分直帰になると思う』   事務員にそう告げ、俺は会社を無理矢理飛び出した。   外へ出ると、歩きながらつい携帯を開いてしまう。   これは現代人全てが患っている病だね。     メール着信が二件。     一通はモバゲーNEWS、一通はユカだ。     『今夜はカレーだぜ❗ 遅くなるなら必ず連絡してね❤ 彼の為にカレーを作る華麗なユカちゃん✌ ヤバッ💦 オヤジが伝染ったよ😜』       …………。       見なかった事にしよう。       ユカと付き合って、もう二年になる。ウチに転がり込んで来てからも既に一年位か。   結婚なんて考えてた事も無かったな。   歳が一廻り以上も離れているせいか、ヤる事はヤってるくせに現実世界とは違う場所に置いている気がするよ。       ああっ、だめだっ! 今日は気分が乗らない。   足が勝手に、馴染みの漫画喫茶へ向かっていた。     マンガを読むじゃなし、ネットを見るでなし……。何も考えずに、ぼぉっとするには最適な場所だ。       しかし、あれだ……。ユカの携帯依存症は最近異常だな。   せめて、俺が帰ってからはなんとかして欲しいもんだ。   昼間もモバをやってるみたいだが、ジーンズショップってのはそんなに暇なんだろうか?   そういう俺もこんな所でさぼってる訳だが……。       …………。       …………。       …………。       ……ん?     『うぉ! やべぇ!』   俺はぐっすり寝てしまっていた。     携帯の着信……。     『うわっ! 十件!』     八件が会社からだった。   『もしもし、早川です! すいません、連絡遅れてしまいました』     時計は七時を過ぎていた。   幸い会社からの電話は大した用件ではなく、直帰の旨を伝えて通話を終えた。
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