モバ・カノ

モバゲータウン

『ねぇ、今日は日記の更新しないの？』

寝そべってナイターを観ていた俺に、突然ユカがまたがってきた。

『痛ってぇなぁ！　今野球観てんだろ！？』

『昼過ぎまで寝てたと思ったら、夜はビール飲みながら野球ですか？　ケンちゃんオッサンみたいだよ』

北京オリンピックを四十路で迎える俺を捕まえて「オッサンみたい」ってのも変な表現だ。

正真正銘のオッサンだっての……。

『ねぇオッサン？　もう一週間も更新してないよ？　ネタないの？』

別にユカが俺の日記を覗き見している訳でも、二人で交換日記を付けている訳でもない。

俺は半年位前からブログを付けていた。

と、言ってもそんな立派なモノではない。

少し前にＣＭが流れていた「モバゲータウン」での話だ。

『見て見て。みんな日記どうしたの？　って言ってるよ。せっかく増えた友達、又減っちゃうよ？』

「友達」とは「モバゲータウン」内で仲良くなった仲間的存在だ。　

日記や伝言板でメッセージのやり取り、アバターと呼ばれる自分の分身を着せ替えての自己アピール、いわゆるＳＮＳとしては良く出来ている。　

『ほら、板コメくらい返しなよ』

そう言ってユカは、テレビに釘付けの俺の顔に、携帯を押しつけてきた。

『分かったよ！　このイニング終わったら見るから！』

やれやれ……。

丁度ダブルプレイでチェンジだ。

『最近ずっとサボってたからなぁ』

『ホントだよ！　ユカなんか毎日やってんのに！』

(だから？)

『何か言った！？』

(いいえ……)

俺は久しぶりに「モバゲータウン」を訪れ「マイプロフィール」を開いた。

…………。

そこには、1人で伝言板を独占している奴が。

>>おい❗サボリ魔💢

>>日記更新しないの？ハン😏ネタ切れかW

>>もしも～し……。応答願いマース😓

>>〓 ヾ(＾-＾;)ﾆｯｷﾏﾀﾞｧ？

>>ｳﾝｺｸｻｲ(｀ε´)ﾅﾝﾄｶｲｴｲ✌

全て「春☆姫」という女。

『全部お前じゃん……』