モバゲータウン

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この人物が俺の友達第1号なのだが……。   この話にはオチがある。   その名前が……。       「春☆姫」つまりユカだった。   策略と表現したのは、こういう意味だ。   自分が友達になる事で、飽きっぽい俺を「モバゲータウン」にのめり込ませていやがった。   それでも最近は、少し飽きてきたんだが。       CMが終わり、ナイター中継が再開された頃には、ユカは自分の携帯と睨めっこを始めていた。   『この子最近よくくるなぁ。足跡ばっかだけど』   俺はユカのセリフを独り言として聞き流し、また野球を観戦し始めた。       『あれ? ケンちゃんトコにも行ってるねぇ』     …………。     『聞いてる?』     …………。     『あっ! 白髪!』     …………。     『私の彼は、オッサンなので白髪が多いの。今テレビに夢中だからコッソリ抜いてやる……っと!』   『何っ!?』   慌てて振り向くと、まるでイタズラっ子の様な顔したユカが手を伸ばしている。     『チッ! 気付かれたか』   『アホかお前、モバ以外やる事ないのかよ』   『アホかお前、野球しか観る物無いのかよ』      このっ……。     あっ!   部屋の隅にレンタルビデオの袋が。   ああ、そっか。週末に海外ドラマの続きを一緒に観る約束してたっけ。   やけにチョッカイかけてくると思ったら。       『ユカ、悪りぃ』    『なぁにがぁ?』   俺は、立ち上がりビデオショップの袋を手に取る。    『こいつ、約束してたっけ』   『別にぃ……』   少し脹れっ面だ。   『風呂入るわ……上がったらDVD観ようぜ』   ユカの頭を軽く掴み、袋を渡す。   『観たいなら、付き合ってあげてもイイけど?』   『はいはい』       風呂から出てくると、ユカはまた携帯と睨めっこしてる。   『さっき言ってた子から友希来ててさ、友達になっちゃった! 彼女も「雲酷斎」の日記たまに読んでるみたいよ。』   『今日はモバもういいだろ? DVD観ようぜ』   『は~い』   こういう時の返事だけは、いつも素直だ。    ユカは冷蔵庫からビールを二本取出して、一本を俺に渡す。   『ねえねえ、前回のラスト覚えてる?』   俺の隣に座り、リモコンを操作しながら大はしゃぎ。こんな事なら、早く気付いてやれば良かった。   『ケンちゃん?』   『ん?』   『明日は日記更新する?』     …………。
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