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連休明けの仕事は辛い。
新社会人でなくても五月病にかかりそうだ。だからという訳ではないが、結局ほとんど一日サボって終わってしまった。
これ位の特典がなけりゃ営業なんてやってられない。
やっと我が家だ。と言っても賃貸マンションだが。
ん?
エレベーター待ちの先客、隣りの部屋のオタク野郎だ。
こっちが挨拶しても会釈一つしないバカ。
最近はこっちも無視してる。
しかし……。
さすがにエレベーター乗り合わせは気まずい。
向こうは携帯の画面を見たままなのだが。
一応軽く会釈をしてみる。
…………。
やっぱり無視か!
(あれ?)
こいつモバやってんだ。ついニヤけてしまった。
(えっ?)
春☆姫のプロフィールだ!
世間は狭い。
(コイツの名前は……っと)
見えない。
(おっと!)
オタクが顔を上げた。
『ど、どうも……』
目が会った。
思わず挨拶しちまったが、ジロッと一瞥しただけでまた携帯に目を落とした。
今度は画面がこっちに見えない様に。
(ふぅ……)
どっちかって言うと俺の方がマナー違反か。
エレベーターを降りても同じ方向へ歩く。
そりゃそうだ、隣りなんだから。
二人揃ってジャラジャラと鍵をまさぐる。
『お帰りーっ!』
『うわっ!』
突然ユカがドアを開けた。
『あ、今晩わぁ……』
ユカが挨拶をすると、オタクは軽く会釈をした。
(なんだコイツ。ユカには挨拶すんのか……)
『ビックリした?』
『ああ、死ぬ程な』
そう言いながら俺はドアを閉める。
『お前、今日遅番って言ってなかったか?』
『あのね、カンナちゃんがね、雲酷斎とも友達になりたいんだってさ!』
俺の言葉を無視し、自分の要件をまくし立てる。
『は?』
『こないだ友達になった子なんだけど』
…………。
ユカの頭はモバしかないのか?
『後にしてくれ』
意味も無く不愉快だった。
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