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月曜はナイターも無い。
『巨人強ぇなぁ』
スポーツ紙を開き、ビールを煽りながらユカを待つ。
『ただいまぁ!』
…………。
(コンビニで幾ら買い物してくるんだよ)
ユカの手には弁当だけじゃなく、お菓子やらジュースやら雑誌が。まるでスーパーにでも行って来たかの様な量。
『なぁユカ……』
『ん?』
『少しモバやりすぎじゃないか? それじゃ完全な携帯依存症だぞ』
『今日はご飯作れなかったけど、明日からちゃんとするからもう怒んないで』
『いや、そういう意味じゃなくてさ……うっ!』
突然抱き付いて来るユカ。
『ごめんなさい』
『いや、だから……そうじゃなくて……』
『ヨシヨシ』
ユカは抱き付いたまま、母親が子供にそうする様に、俺の頭をなでる。
『怒り虫取れた?』
(なんじゃそりゃ?)
『もういいよ……』
俺の頬に唇を押しつけた後、ユカはやっと離れた。
『ホントはケンちゃんもお腹すいてるんでしょ? 一緒に食べよっ』
まぁ、確かに……。
若干……。
『これね、アソコの新製品なんだよ!』
同じ弁当が二つ、テーブルに並べられている。
『友達がね、これは当たりだって言ってた!』
…………?
『友達?』
『うん。モバ友の子』
またモバか。
でもあのコンビニ、市内にしか無いはず……。
『そうそう、だって県内の友達だもん!』
『県内ってお前……』
『案外同じマンションの人だったりしてね』
…………。
ユカの何気ない言葉に、背筋がざわついた。
『お前、県内にどれ位モバ友いるの?』
『え? あっ! 大丈夫だよ。県内は全部女の子だから。それに、プロフに彼がいるって書いてるじゃん! ケンちゃん妬いてる?』
まさかな……。
さっきエレベーターで見た、アイツの携帯画面が頭を過ぎった。
『美味しいっ! ホント当たりだねこのお弁当! あとでお礼言わなきゃ』
携帯の向こう側にいる、顔も素性も分からない幾万の人間。
こいつにとっての友達。
その得体の知れない相手に、ユカはあまりに無防備に思えた……。
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