零壱.語り継がれなかった物語

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「ここ…なの……」 眼前に広がるは宮中とは思えぬほど美しすぎる桜並木。 「こんなとこ…あったんですね」 「一度…お父様に……連れてきて…もらったの!」 「道長様に?へぇ、それじゃあ…ここは今から姫様と僕の秘密の場所だな」 「……そう…ね」 やば…、敬語使わなかった…。 ま、いいか。 「さてお勉強でもしましょうか」 「…えぇ……」 「そんな嫌そうな顔をしても駄目ですよ。俺はあんたの家庭教師だからな」 「あれ…俺?」 「さっきまでは猫かぶってたのさ。なーんか雨雫姫見てると信頼出来そうだし……。この事は誰にも言わないで下さいね」 彼女の耳元でそう囁いた。 顔が赤くなっているように見えたけど…気のせい…かな? こうして俺の護衛兼家庭教師生活が始まった。 あくまでも雨雫姫は姫様なのだからそれなりにいい暮らしが出来るだろう……という考えは直ぐに取っ払われることになる。
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