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こういうのを惚れているというのだろうか。恋い慕っているというのだろうか。
そこに行き着いたとき彼は自分の頬が染まるのを感じた。戦場を駆ける時とはまた違う昂揚感に、思わず頭を抱えた。
するとタイミングよく廊下を小走りに鳴らす足音が聞こえた。三成殿だといい、だけどふ抜けた自分を見られたくはない、と顔をあげず足音が止まるのを待った。
願いどおり足音は幸村の傍でとまり、同時にふわりと背中に掛けられた。
「ここは少し冷える」
「…すいません三成殿」
顔をあげた瞬間に三成殿と目が合い、また熱が戻ってきた気がする。
なさけない。
恥ずかしさから顔を庭先に向ける。
すると彼も幸村の視線を追うように庭の方へ向いた。
「幸村、平和とは少し肌寒いものなのだろうか」
どうしてそう思うのか、と問いかける間もなく三成殿は続ける。
「誰かに温めてもらうことができるだろう?」
寒さに震える肩も戦場で震える腕も、人のぬくもりでとまるではないか。
彼の横顔は凛としていて、時折強く吹く風に肩を震わせることもなかった。
それでも幸村は彼の手をつかむ。小さな手は幸村よりも冷たかった。
「三成殿、そなたは表に出さないから困る」
つないだ手から体温が伝わるのはまだ先のことらしく、彼の手はいまだ冷たい。
それでも自分が温めてあげられたら。
だから、こうも、手を
「…肌寒い、な」
ぽつり呟いた幸村に
あぁ、そうだな
そう返した。
+++サンゲ+++
幸村と三成はこれくらいが丁度いいのです。
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