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「すみませんが、それ以上お近付きになられないで頂きたい」
「え?」
幸村の沈んだような声に 三成
は足を止める。
「今夜は冷えます。早くお部屋にお戻り下さい」
戦ではあんなにも力強く槍を振るっていた幸村が今はこんなにも消えそうなのは何故?
池に浮かぶ花が目に入った。
あぁ、そうか
「献花、なのか。これは」
戦で亡くなった人たちへの幸村からの気持ち。
「見つかってしまいましたか」
「見られたくなかったのか?」
ちょっと離れた幸村の表情は見えない。
「そう、ですね…」
「何故だ?死者を悼む気持ちは悪いことではないと思うが…」
「でも私に力があれば、悼む死者など居ないはずです」
花を贈るのは亡くなった兵士に、そして…弱い自分に。
だから見られたくなどなかった。
「でも…幸村のおかげで悼まなくて良かった兵士も居るぞ」
「… 三成殿?」
「俺は何度か幸村に命を助けてもらっている」
そう言うと、池に浮かぶ花を2、3個手に取る。
そして幸村にそっと近付き、その花を差し出す。
「これは助けてもらった俺の命の分だ」
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